AIに入口を奪われた若手は、どうすればいいか

「AIが若手の仕事を奪う」という話が、少し前から話題になっています。スタンフォードの研究(Canaries in the Coal Mine?)によると、AIに最もさらされる職種で、若手(22〜25歳)の雇用が約13%減ったそうです。ベテランはほとんど減っていない。「AIは、まず若者の仕事から奪っていくのか」と。
正直、奪われるという話自体は理解できます。ただ、私がこのニュースを聞いてまず思ったのは、少し別のことでした。「その"雇用が減った"って、具体的に何が減ったんだ?」ということです。
「雇用が減った」の中身を、まず分解したい
職業柄なのか、数字をそのまま鵜呑みにするのが、私はちょっと苦手なんです。「13%減」と言われても、今いる社員をクビにして減ったのか、それとも新しく採る人数が減ったのかで、意味が全然ちがってきます。
調べてみると、答えははっきりしていました。クビ(レイオフ)ではなく、採用が細っている。企業は今いる若手を切っているわけではなく、誰かが辞めて空いたエントリー級のポジションを、若手で埋め直さなくなっている。研究の言葉を借りると、「キャリアの梯子の、一番下の段が、静かに外されている」。しかも給与を下げるのではなく、人数のほうで調整している、というのもポイントでした。
同じ「13%減」でも、"大量解雇"と"入口が静かに消える"とでは、受け止め方がだいぶ変わります。起きているのは、後者のようです。
消えるのは「置き換えられる仕事」、増えるのは「補助に使う仕事」
もう一つ、大事な事実があります。減っているのはAIが人の代わりに"置き換えて"しまえる仕事で、AIを"補助"として使う仕事は、むしろ増えている、ということです。
具体的に分けると、こういうことだと思います。
AIが置き換えるのは、手順が決まっていて、丸ごと任せられる作業。定型的なコーディング、カスタマーサポートの一次対応、データ入力や書類づくり、といったもの。——そしてこれらは、まさに若手が経験を積むための"入口"の仕事でした。
逆に、AIを補助として使う仕事は、問いを立てたり、判断したり、出てきたものに責任を持ったりする仕事です。何を作るかを決める、AIの答えが正しいか確かめる、曖昧な相談を意味のある形に整理する。このあたりは、まだ人の領分です。
だから構造としては、"手順の仕事"の入口が消えて、"問いと判断"の層が残る(むしろ増える)。若手が減って経験者が増えているのは、そういうことなんだと思います。
じゃあ若手は、どこで判断力を育てるのか
ここで、素直に「難しいな」と思う点があります。
「これからの若手は、問いを立てる力や判断する力で勝負すればいい」——言うのは簡単です。私自身、もし今若手だったら、そこを強みにして動くと思いますし、いっそ自分で何か始めるのもアリだと思う。
ただ、その"問いと判断力"って、そもそも入口の作業を一通りやって、失敗しながら身につけていくものじゃないですか。定型の仕事をこなす中で、「あ、こういうときはこう考えるのか」と覚えていく。その入口が消えたら、若手はどこでその力を鍛えるんだ、という鶏と卵の問題が出てきます。以前、私は「AIはできる人を強くする道具で、できない人をできる人には変えない。だから格差は広がる」と書いたことがありますが、それとも地続きの話です。
近道せず、遠回りして入口に入ればいい
ただ、そこまで考えて、自分の中では一応の答えが出ています。
要は、入口が消えたのは"AIにさらされた花形の職種"であって、仕事そのものは、選ばなければいくらでもある、ということです。AIに置き換えられていない現場は、まだたくさんある。そういうところで手を動かして経験を積めば、ちゃんと入口には入れる。
近道をしようとせず、遠回りする。花形の職種にいきなり入れなくても、まだ入口が残っている場所で力をつけてから戦えばいい。地味だし、時間はかかります。でも、AIが"できる人"を強くする道具である以上、結局のところ、遠回りしてでも自分を"できる人"の側に持っていく——今できることは、たぶんそれくらいシンプルなことなのかもしれません。



