求めていない人は、何を渡しても使わない。昔ある自動化で学んだこと

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『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健)に、こんな一節があります。「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を呑ませることはできない。本人の意向を無視して『変わること』を強要しても、あとで強烈な反動がやってくる」。
この一節を読んで、自分の昔の失敗をひとつ思い出しました。ただ、私の場合は「変わりたくない人」というより、もっと単純に「求めていない人」の話です。求めていない人は、どんなにいいものを渡しても、使ってくれません。
すごいものを作れば喜ばれる、とは限らない
昔、サーバーの運用の仕事をしていたことがあります。当時はサーバーの構築を手作業でやっていたのですが、あるとき「それを自動化しよう」というプロジェクトが始まりました。私はエンジニアだったので、その仕組みづくりを担当しました。
できあがったものを現場に渡してみると、反応は思っていたのと違いました。「ここがちょっと」「これはどうなの」と、あれこれ引っかかりを指摘されて、結局、定着しなかったんです。
よくよく話を聞いてみて、理由が分かりました。みんな、そこまで自動化を求めていなかったんです。「自動化できるのはすごいね、嬉しいね」とは言ってくれる。でも本音のところでは、「別に、手作業がそんなに苦になっているわけじゃないし」という感じでした。どれだけすごいものを作っても、相手がそれを求めていなければ、使われない。そのことを、このとき初めて実感しました。
ただ、あれは確かめても防げなかった
正直に付け加えておくと、この件に関しては、事前に「みんな求めているのか」を確かめていたとしても、どうしようもなかったと思います。そもそもが上からの「やってくれ」という指示で始まったプロジェクトで、私も含めてメンバーは、一応その指示に乗って進めていただけでした。求められていないと分かったところで、作らないという選択肢はなかったんです。
だから、これは「確認さえすればうまくいった」という綺麗な教訓の話ではありません。ただ、この経験は、そのあとの自分の仕事のやり方を、はっきり変えました。
「すごいね」と「困っている」は違う
今の私は、何かを作る前に、必ず確かめるようにしていることがあります。その業務で「みんなが本当に困っているのかどうか」です。
「こういうツールを作れば、こんなに楽になりますよ。絶対に必要ですよね」——自分ではそう思っていても、まずはぐっとこらえて、困っているかどうかを聞く。というのも、「こう自動化できます、すごいでしょう」と見せると、たいていの人は「すごいね」と言ってくれるんです。でも、その「すごいね」は、「困っている」とは必ずしもイコールではありません。すごいと思ってはいても、実は困っていない、ということが普通にあります。
作り手の「喜ばれるはず」を、ぐっと我慢する
作る側・提供する側に立つと、どうしても「これだけすごいものを作っているんだから、みんな喜ぶに違いない」と思ってしまいます。この気持ちが、いちばんの落とし穴なのかもしれません。
だから、その「喜ばれるはず」という気持ちをぐっと我慢して、作る前に「これ、そもそも困っていますか?」と聞く。作ってから確かめるのではなく、作る前に確かめる。順番の話なのですが、地味に、これがいちばん大事なことだと思っています。
もし今、何かのツールやシステムを入れたのに現場が使ってくれない、あるいはこれから何かを導入しようとしているなら、その前に一度、「そもそもみんな、そこで困っているのか」を整理してみてはいかがでしょうか。
じゃないとせっかく作ったあるいはお金を払って導入した素晴らしいツールがただの置物なってしまうかもしれません。
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