『エッセンシャル思考』は正しい。でも「例外を許すな」は言い過ぎだと思う

『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン)を読みました。いろいろと刺さる本だったのですが、一番「これは自分もやっているな」と思ったのが、"取捨選択"のところでした。今日は、この本を読んで自分の仕事と重なった部分——追加の依頼をどうさばくか、そして自分の中の線引きの話を書きます。
3行でわかる『エッセンシャル思考』
- 「より少なく、しかしより良く」。やることを減らして、本質的な少数に力を注ぐ、という考え方の本です
- キーワードは「トレードオフ」。何かをやると決めるのは、同時に別の何かをやらないと決めること、という捉え方
- 「上手に断る」「線を引く」ための具体的な技術がたくさん紹介されています
「断る」のではなく、相手に「捨てる選択」を返す
本の中に、こんな一節があります。「単にノーと言うのが難しければ、上司にトレードオフを意識させよう。『では今抱えている仕事のうち、どれを後まわしに?』と」。
これは、私がふだんやっていることに近いです。お客さんから「あれもお願い」と追加の依頼が来たとき、私はまず「いいですね!」と、その依頼自体を肯定します。そのうえで、「ただ、いまこの作業も進行中で。どちらを先にやりましょうか?」と正直に返します。
さらに、その"別の作業"がもし別の人からの依頼だったときは、こう言ってもらうようにしています。「では、あなたのほうからあの人に、『こっちを優先してもらうので、そちらの納期は遅れます』と伝えてもらえますか」と。
ポイントは、トレードオフを「どっちが優先ですか?」という言葉だけで終わらせないことです。"別の人に頭を下げる"という実際の手間まで相手に持ってもらうと、その依頼が本当に今すぐ必要なのかが、相手の側でもはっきりしてきます。
大事なのは、線を引く前に「肯定」すること
こうやってトレードオフを返すと、「あ、じゃあ後でいいです」となることもあれば、「OK、こっちを優先して」と言われることもあります。どちらでも構いません。
ただ、一つだけ大事にしているのは、最初に「いいですね!」と肯定することです。これは「別にやりたくないわけじゃないですよ」というのを、相手に先に伝えるためです。ここを飛ばして「今は無理です」だけ返すと、ただの拒絶になってしまう。順番として、肯定が先。それだけで、同じ「どっちを優先?」でも、ずいぶん角が立ちにくくなります。
もちろん、あっちもこっちも本当に両方やらないとまずい、という場面もあります。そういうときは、程度によっては多少夜も動いて済ませてしまうこともあります。線引きといっても、そこは杓子定規にはしていません。
線は引くけれど、緊急なら破る
私には、はっきり引いている線がいくつかあります。たとえば「開発は原則すべてベンダーに任せる(自分が手を動かすのは例外)」というもの。責任の所在を曖昧にしないための線です。
ただ、これも絶対ではありません。それを今すぐやらないと障害になる、問題になる——そういう緊急のときは、線を破って自分で手を動かすこともあります。基準は「切実さ」です。
大事なのは、破るときに「これは例外です」とはっきり伝えること。黙って例外を作ると、相手は「またお願いできる」と思ってしまいます。だから、例外は例外として口に出す。それだけで、次から常態化するのを防げます。
「一度でも例外を許すと例外だらけ」は、言い過ぎだと思う
この本には、線引きについてこんな一節もあります。「一度でも例外を許したら、その後は例外だらけになる。仕事の線引きは砂の壁のようなものだ」。
言いたいことは分かります。ただ、正直に言うと、これは少し言い過ぎかなと思っています。
私の受け取り方はこうです。これは「それくらいの姿勢を持って交渉に臨め」ということであって、「何がなんでも、絶対に例外を許すな」という意味ではない。実際、緊急なら私は線を破りますし、それで「例外だらけ」になったこともありません。「これは例外」と伝えさえすれば、線はちゃんと元に戻ります。
本に書いてあることを、そのまま絶対のルールとして飲み込む必要はないのだと思います。強めに書いてある主張は、「それくらいの構えでいけ」という励ましくらいに受け取って、あとは自分の現場に合わせて程度を決める。私にとっては、そのほうがずっと使えるやり方でした。




