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「全員がAIを使いこなす」は、あきらめていい——生成AIが定着しない会社の現実解

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「全員がAIを使いこなす」は、あきらめていい——生成AIが定着しない会社の現実解

総務省の令和7年版 情報通信白書によると、日本企業の55.2%が何らかの業務で生成AIを利用しているそうです。ただし、その中身を見ると中心は「メールや議事録、資料作成等の補助」(47.3%)。中国95.8%、米国90.6%、ドイツ90.3%という他国の利用率と比べると、差は歴然としています。

ただ、今日はこの数字の大小の話ではなくて、「55.2%の中身」の話をしたいと思います。現場で見てきた実感として、この統計にはとても心当たりがあるからです。

私が見てきた「55.2%」の中身

ご一緒してきた会社でも、「生成AIを使って業務効率化をしよう!」というスローガンを掲げて、会社としていろいろ支援している、という光景は実際にあります。でも、実際に使っているのはほんの一部の人かな、という印象です。

面白いのは、「AI使ってますよ」と答える人からの相談です。その質問、AIに聞けばすぐ分かるはずなのに、どうして私に聞いてくるんだろう……と思うことがよくあります。で、私は代わりにAIに聞いて、その答えを相手に合わせて噛み砕いて伝えているだけだったりします(この「噛み砕き」がありがたがられているのかもしれませんが)。

「利用している」にチェックが付く会社の中でも、実態はこれくらいのグラデーションがある——統計の55.2%という数字は、そういうふうに読むのが正しいのかなと思います。

なぜ定着しないのか——「慣れる時間」が惜しい

強力なツールであることは、みんな理解しているはずなんです。それでも使われない理由を現場で観察していると、いくつかパターンが見えてきます。

  • 「人に聞いたほうが早い」と思っている。新しいツールに慣れるより、隣の詳しい人に聞くほうが確実で速い(ように感じる)
  • 優秀な人ほど頼らない。自分でやれてしまうから、AIに任せる動機が生まれない

共通しているのは、ツールに慣れるための時間が惜しいということだと思います。目の前の仕事は今日も回っているので、投資としての「慣れる時間」が後回しになる。長期的に見れば絶対に間違ってるんですけど、気持ちは分かります。

「補助止まり」は、むしろ上等

では、統計に出ていた「メールや資料作成の補助」という使われ方は、レベルが低いのでしょうか。私はそうは思いません。むしろ上等だと思っています。

私自身も妻も、「相手からこういう連絡が来たんだけど、角の立たない返信がしたい」というときにAIを使います。地味ですが、確実に助かる使い方です。そして、こういう小さな成功体験が積み重なると、人は勝手に「これもAIに任せられるのかな」と試し始めます。補助的な利用は入口として機能するんです。

問題は、その先です。会社として「使ってね」と言うだけでは、人は動きません。ここから先は、別のアプローチが要ります。

「全員に使わせる」は、あきらめていい

身も蓋もないことを書きます。これだけ便利なものが目の前にあるのに使わない人は、何を言っても使いません。それはドライに受け入れたほうがいい、というのが私の考えです。使わない人に「使いましょうよ」と働きかけ続けるのは、お互いにとって時間の無駄になりがちです。

「社員全員が生成AIを使いこなす組織」は、絵としては理想です。でも、それを研修やスローガンで実現するのは現実的ではない——半数の企業が「導入済み」なのに補助止まり、という統計は、まさにそのことを示しているのではないでしょうか。

現実解は、人ではなく業務に埋め込むこと

私が以前ご一緒した現場で、AIによる自動化で月150時間の工数削減ができたことがあります。このとき、実際にツールを使うコンテンツチームの方々は、AIに慣れる必要がまったくありませんでした。リライトしたい記事にチェックを付けて「作成」ボタンを押し、できあがった文章を確認して「入稿」を押す。それだけです。プロンプトは一文字も書いていません。

AIを人に覚えさせるのではなく、業務の仕組みのほうに埋め込む。そうすれば、AIに興味がない人の手元にも、AIの恩恵だけが届きます。

大がかりなツールを作らなくても、始め方はあります。たとえば——

  • 業務上、誰もが必ず通る作業をひとつ選んで、そこにAIを組み込んでみる
  • 定例会議でみんなで考える場面になったら、誰かが「AIにも聞いてみます」と言って、AIを議論の参加者にしてしまう

後者は特におすすめです。導入コストはゼロで、「AIと一緒に働く」感覚がチームに自然と広がっていきます。

結局、仕掛ける人が社内に1人いるかどうか

ここまで読んで気づかれたかもしれませんが、「作業に組み込む」も「会議に参加させる」も、それを仕掛ける人が1人いることが前提です。逆に言えば、必要なのは全員の教育ではなく、その1人です。

AIを使いこなす人を社内に入れる。エンジニアならなおいいと思います。人力で回っている仕組みを自動化するのは、もともとエンジニアの得意分野なので、「AIを業務に埋め込む」との相性がいいんです。

「試しただけ」で止まっている55.2%と、そこから抜け出す会社の分かれ目は、たぶんそこにあります。

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